
MAJOR ARCANA · IX
隠者The Hermit
灯りは、自分の内側にある
隠者の原画を読む
描かれたもの5か所に番号を付けました。番号を押すと、その部分について Waite が書いた一文と和訳、補足が読めます。
ランタンの星
It is a star which shines in the lantern.
ランタンの中で輝いているのは星である。
原画のランタンの中には、星形の光が描かれています。火ではなく星、という点が原典の強調です。
掲げた腕
the lamp is not enveloped partially in the mantle of its bearer
灯は、持ち主のマントに半ば包まれてはいない。
Waite によれば、従来の図柄との違いはこの一点だけ。古い版では灯がマントに半ば隠されていました。この版では腕を伸ばして外に掲げています。
老人の顔
who blends the idea of the Ancient of Days with the Light of the World
彼は「日の老いたる者」と「世の光」の観念を併せ持つ。
「日の老いたる者」は旧約ダニエル書7章、「世の光」は新約ヨハネ福音書8章の言葉です。
雪の頂
the figure is seen holding up his beacon on an eminence
その姿は、高みに立って灯を掲げているところとして描かれている。
足元は雪をかぶった頂。彼は山を登っている途中ではなく、すでに上にいます。
黄色い杖
It is said also that his lantern contains the Light of Occult Science and that his staff is a Magic Wand.
そのランタンにはオカルト学の光が宿り、杖は魔法の杖だ、とも言われる。
Waite はこうした説明を「占いの意味と同じ類い」と退けています。原典が杖に象徴を与えていない、ということ自体がひとつの情報です。
原典の占的意味と、消えた語
Waite は本書の第3部で、各札に占いで使う語を短く並べました。
正位置
Prudence, circumspection; also and especially treason, dissimulation, roguery, corruption.
思慮、用心深さ。またとりわけ、裏切り、本心を隠すこと、悪事、腐敗。
逆位置
Concealment, disguise, policy, fear, unreasoned caution.
隠すこと、変装、策略、恐れ、理由のない用心。
原典と、いまのキーワード
現代の「内省・探究」は穏やかな札として読まれますが、Waite の正位置は「思慮、用心深さ」に続けて「とりわけ、裏切り、本心を隠すこと、悪事、腐敗」と書きます。隠れることの暗い面が、正位置の中心に置かれているわけです。逆位置も「隠すこと、変装、策略、恐れ」。ひとりの時間を読むときに、何かを隠すための孤立ではないか、と問う視点が原典から得られます。
いまのキーワードから消えた語
- treason裏切り
- 正位置に「とりわけ」裏切り・偽り・悪事・腐敗。静かな賢者の像の裏に、隠しごとの意味が強く置かれていました。
- dissimulation本心を隠すこと
- フードを深くかぶった姿は、かつては「隠す者」とも読まれた、ということです。
- policy策略(逆位置)
- ここでの policy は政策ではなく、古い用法の「抜け目ない策」。
原典メモ
His beacon intimates that "where I am, you also may be."
彼の灯は「わたしのいるところに、あなたも来られる」と告げている。
Waite は隠者を真理を探して旅する賢者とする説明を退け、探求よりも到達の札だと書いています。
現代の読み方
隠者は内省と精神的探求を象徴する。賢者は他人に教える前に、まず自分の暗闇に光を当てなければならない。占いで現れたとき、それは外側の答えを求めるのを止め、内なる声に耳を澄ませる時期を告げる。
正位置
- 状況
- 外側の喧騒から距離を置き、自分の内側を照らすべき時期に入っています。
- 内面
- 答えを誰かにもらうより、自分で見つけたいという欲求が静かに強まっているはず。
- 行動のヒント
- 今日は1時間だけスマホを置き、ひとりで歩く・書く・考えることに使ってください。
逆位置
- 状況
- 孤独が長引き、必要な助けを求めることまで諦めはじめていないでしょうか。
- 内面
- 「弱みを見せたら負け」という古い守りが、本当の繋がりを遠ざけています。
- 行動のヒント
- 今日は1人だけ、信頼できる人に「今ちょっと話したい」と短文で送ってください。
恋愛・仕事・人間関係で出たとき
隠者が恋愛で出たときの意味は?
ひとりの時間を取ること自体が関係の質を上げる時期。距離が深さを作る。
隠者が仕事で出たときの意味は?
リサーチ・執筆・専門技術の研鑽。チームより単独作業に追い風。
隠者が人間関係で出たときの意味は?
信頼できる少数との深い関係。広く浅い人脈整理の合図。
「隠者」のテーマを、誰かに話しながら整理したくなったら。
電話占いの選び方と、使いすぎを防ぐルール →伝統的な対応
Golden Dawnではヘブライ文字「ヨッド(手)」、占星術上は乙女座、生命の樹ではケセドからティファレトへ降りる第20の道に対応する。ヴィスコンティ・スフォルツァ版では「Il Tempo(時間・老人)」として砂時計を持つ姿で描かれていた。ランタンはマルセイユ版にもあり、Waite は灯をマントから出して掲げる形にした。
Waite は当時広く行われていたヘブライ文字の対応を本書で採っていません。理由の二つ目:
secondly, because nearly every attribution is wrong.
第二に、ほぼすべての対応が誤っているからである。
ほかの札と並んだとき
この札を引いたあなたへ
出典
- 英文:A. E. Waite『The Pictorial Key to the Tarot』(Wikisource・1910/1922刊)第1部・第2部・第3部
- 原画:Wikimedia Commons「RWS1909 - 09 Hermit.jpeg」(Pamela Colman Smith〈1878–1951〉画・1909年 Rider 社刊・パブリックドメイン)
- 和訳と解説は当サイトによるもの。占いの結果は娯楽としてお楽しみください。


