教皇(The Hierophant)の原画。1909年 Rider 社刊、Pamela Colman Smith 画

MAJOR ARCANA · V

教皇The Hierophant

伝統のなかに、まだ生きた知恵がある

正位置伝統教え信頼規範助言

逆位置形式主義独善反発型破り不信

教皇の原画を読む

描かれたもの6か所に番号を付けました。番号を押すと、その部分について Waite が書いた一文と和訳、補足が読めます。

原典に記述あり独自の観察
  1. 三重冠

    He wears the triple crown

    彼は三重の冠をかぶっている。

    原画の冠は3段に重なっています。原典は「通常は教皇と呼ばれてきたが、それは彼が象徴するより一般的な職務の一例にすぎない」と書きます。

  2. 2本の柱

    seated between two pillars, but they are not those of the Temple which is guarded by the High Priestess

    2本の柱のあいだに座っているが、それは女教皇が守る神殿の柱ではない。

    女教皇の柱は黒と白で文字入り、こちらは灰色の石柱。似た構図をわざと違う柱で描き分けています。

  3. 掲げた右手

    with his right hand he gives the well-known ecclesiastical sign which is called that of esotericism

    右手では、秘教のしるしと呼ばれるよく知られた教会の身振りをしている。

    原典は、これを教義の表と隠された部分とを分けるしるしだと説明し、「女教皇は何のしるしもしない」と対比します。悪魔(15番)の右手は、この祝福の裏返しとして描かれています。

  4. 三重十字の笏

    In his left hand he holds a sceptre terminating in the triple cross

    左手には、先が三重の十字になった笏を持つ。

    冠も3段、笏も3段。三つ組が重ねて描かれています。

  5. 交差した鍵

    At his feet are the crossed keys

    足元には交差した鍵がある。

    原典は別の論者の言葉を引いて、教皇を「鍵の力」、すなわち公に認められた正統の教えだとしています。

  6. ひざまずく2人

    two priestly ministers in albs kneel before him

    白い祭服を着た2人の聖職者が、彼の前にひざまずいている。

    2人の背中がこちらを向いています。見る人は、ひざまずく者の後ろから教皇を見上げる位置に置かれています。

原典の占的意味と、消えた語

Waite は本書の第3部で、各札に占いで使う語を短く並べました。

正位置

Marriage, alliance, captivity, servitude; by another account, mercy and goodness; inspiration; the man to whom the Querent has recourse.

結婚、同盟、とらわれ、隷属。別の説では慈悲と善良さ。霊感。質問者が頼る男性。

逆位置

Society, good understanding, concord, over-kindness, weakness.

社交、よい理解、和合、親切すぎること、弱さ。

原典と、いまのキーワード

現代の「伝統・教え」に対して、原典の筆頭は「結婚、同盟」、続いて「とらわれ、隷属」です。結びつきと縛りが同じ列にあり、制度に入ることの両面を示しています。逆位置の「社交、よい理解、和合」は、現代の「反発・型破り」より柔らかい語です。最後に「親切すぎること、弱さ」とあり、型から外れた優しさの行き過ぎとして読むことができます。

いまのキーワードから消えた語

captivityとらわれ
正位置に「とらわれ・隷属」。教えを授ける者は、裏返せば人を型にはめる者でもある、という両面が原典にはあります。
Marriage結婚
現代では恋人(6番)に寄せて語られがちな「結婚」が、原典では教皇の正位置の筆頭です。制度としての結びつきの札でした。
over-kindness親切すぎること(逆位置)
逆位置は「社交・和合」と並んで「親切すぎ」。厳格さがゆるみすぎる方向です。

現代の読み方

教皇は確立された伝統・体系・師弟関係を象徴する。占いで現れたとき、自己流より既存の知恵を学ぶこと、信頼できる師・先人に教えを乞うことが道を開く。同時に、形骸化した伝統への警告も含む二面性のカード。

正位置

状況
伝統・師・先人の知恵から学ぶことで、進むべき道が見えやすくなる時期です。
内面
自己流でやり切る疲れから、誰かの体系に身を委ねたい欲求が出ているはず。
行動のヒント
今日は信頼できる先人や本に、ひとつだけ具体的な質問を投げかけてください。

逆位置

状況
形骸化したルールや「こうあるべき」が、本当の自分を窮屈にしています。
内面
周りの期待に応えようとして、自分の信念を後回しにしていませんか。
行動のヒント
今日は「本当はやりたくない常識」をひとつだけリストアップしてみてください。

恋愛・仕事・人間関係で出たとき

教皇が恋愛で出たときの意味は?

結婚・伝統的な関係・親族公認の付き合い。あるいは精神的な絆を重視する関係。

教皇が仕事で出たときの意味は?

教育・宗教・コンサルティング・士業など知識を伝える職務に追い風。資格取得の好機。

教皇が人間関係で出たときの意味は?

メンター・師との出会い。あるいは自分が後進を導く場面。

「教皇」のテーマを、誰かに話しながら整理したくなったら。

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伝統的な対応

Golden Dawnではヘブライ文字「ヴァウ(釘)」、占星術上は牡牛座、生命の樹ではホクマーからケセドへ降りる第16の道に対応する。マルセイユ版では「Le Pape(教皇)」として描かれ、この版では「Hierophant」(古代エレウシス秘儀の最高司祭の称号)と呼ばれる。Waite は彼を、外に向けて説かれる正統の教えの力と位置づけた。

Waite は当時広く行われていたヘブライ文字の対応を本書で採っていません。理由の二つ目:

secondly, because nearly every attribution is wrong.

第二に、ほぼすべての対応が誤っているからである。

ほかの札と並んだとき

この札を引いたあなたへ

教皇を引いたあなたは、自己流に疲れているかもしれません。今日は信頼できる先人や本に、ひとつだけ具体的な質問を投げかけてみてください。

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出典

  • 英文:A. E. Waite『The Pictorial Key to the Tarot』(Wikisource・1910/1922刊)第1部・第2部・第3部
  • 原画:Wikimedia Commons「RWS1909 - 05 Hierophant.jpeg」(Pamela Colman Smith〈1878–1951〉画・1909年 Rider 社刊・パブリックドメイン)
  • 和訳と解説は当サイトによるもの。占いの結果は娯楽としてお楽しみください。