愚者(The Fool)の原画。1909年 Rider 社刊、Pamela Colman Smith 画

MAJOR ARCANA · 0

愚者The Fool

崖の縁から、まだ見ぬ道へ

正位置始まり自由好奇心無邪気冒険

逆位置無計画迷い逃避軽率停滞

愚者の原画を読む

描かれたもの6か所に番号を付けました。番号を押すと、その部分について Waite が書いた一文と和訳、補足が読めます。

原典に記述あり独自の観察
  1. 背後の太陽

    The sun, which shines behind him, knows whence he came, whither he is going

    彼の背後で輝く太陽は、彼がどこから来て、どこへ行くのかを知っている。

    若者は左へ進み、太陽は右上、つまり背中側にあります。行き先を知っているのは本人ではなく太陽のほう、という配置です。

  2. 空を見る顔

    His countenance is full of intelligence and expectant dream.

    その顔は知性と、期待に満ちた夢であふれている。

    「愚者」という名前に反して、Waite は顔に知性を見ています。視線の先は崖下ではなく空です。

  3. 手のバラ

    He has a rose in one hand

    片手にはバラを持っている。

    原画では白いバラ。白を「純粋さ」と読む説明は多いものの、原典は色の意味に触れていません。

  4. 杖と袋

    in the other a costly wand, from which depends over his right shoulder a wallet curiously embroidered.

    もう一方の手には高価な杖を持ち、杖からは凝った刺繍の袋が右肩越しに下がっている。

    袋の中身を「過去の経験」などとする読みは後世のものです。原典が語るのは刺繍の凝りようだけ。粗末な放浪者ではなく、高価な杖と華やかな衣の若者として描かれています。

  5. 崖の縁

    The edge which opens on the depth has no terror

    深みへ口を開ける崖の縁に、恐ろしさはない。

    現代の解説では「危険に気づかない無謀さ」と読まれがちですが、Waite は崖を恐れの場として描いていません。逆位置の「不注意」と読み比べる手がかりになります。

  6. 跳ねる犬

    his dog is still bounding.

    犬はまだ跳ね回っている。

    「犬が吠えて危険を知らせている」という説明をよく見かけますが、原典の語は bounding(跳ねている)です。警告の場面とは書かれていません。

原典の占的意味と、消えた語

Waite は本書の第3部で、各札に占いで使う語を短く並べました。

正位置

Folly, mania, extravagance, intoxication, delirium, frenzy, bewrayment.

愚行、熱狂、度を越すこと、陶酔、錯乱、狂乱、秘密の露見。

逆位置

Negligence, absence, distribution, carelessness, apathy, nullity, vanity.

怠慢、不在、分散、不注意、無関心、無価値、虚しさ。

原典と、いまのキーワード

現代のキーワードは「始まり・自由」と前向きですが、Waite の正位置の語は「愚行、熱狂、陶酔」と、度を越した高揚の語が並びます。逆位置の側にあるのは「怠慢、無関心、虚しさ」。熱しすぎるか冷めきるか、という両極で読むと原典に近づきます。自由を読むときも、それが熱狂の勢いではないかを一度確かめてみてください。

いまのキーワードから消えた語

bewrayment秘密の露見
古い英語で「うっかり明かしてしまうこと」。旅立ちの自由さを語る現代の愚者像からは、まず消えている語です。
extravagance度を越すこと
浪費や行き過ぎ。現代の「冒険」は前向きに言い換えた形ですが、原典は同じ勢いを「過剰」の側から見ています。
intoxication陶酔
酔いしれて足元が見えない状態。崖の縁で空を見上げる絵と重ねると、正位置の語を絵の危うさと重ねて読むこともできます。

現代の読み方

愚者は始まりであり、同時に終わりでもある。22枚の旅路の出発点に置かれる一方、番号0は循環の象徴でもある。占いで現れたとき、それは「論理ではなく純粋な信頼で踏み出すべき時期」を告げる。賢明な選択ではなく、生命そのものへの信頼を問うカード。

正位置

状況
新しい一歩を踏み出すエネルギーが、あなたの中で静かに膨らんでいます。
内面
計算より直感、慣習より自由を選びたい気持ちが強くなっているのではないでしょうか。
行動のヒント
完璧な準備を待たず、今日できる最初の一歩だけを軽く踏み出してみてください。

逆位置

状況
見切り発車への迷いや、根拠のない不安が判断を曇らせている可能性があります。
内面
自由でありたいのに、責任から逃げているのでは、という静かな葛藤を抱えていそうです。
行動のヒント
今日は大きな決断は避け、信頼できる人と一度だけ気持ちを口に出してみてください。

恋愛・仕事・人間関係で出たとき

愚者が恋愛で出たときの意味は?

計算抜きで動ける関係。あるいは前例のないタイプの相手との出会い。

愚者が仕事で出たときの意味は?

未知の領域への挑戦・転職・独立。安定より好奇心が成果を生む段階。

愚者が人間関係で出たときの意味は?

肩書きを脇に置いた付き合い。子供のような率直さが鍵を開ける。

「愚者」のテーマを、誰かに話しながら整理したくなったら。

電話占いの選び方と、使いすぎを防ぐルール →

伝統的な対応

Golden Dawnの体系ではヘブライ文字「アレフ(牛・首位の文字)」、四大元素では風、生命の樹では至高のケテルから知恵のホクマーへ降りる第11の道に対応する。マルセイユ版では番号が振られず、デッキの最後に置かれることもあった。ヴィスコンティ・スフォルツァ版(15世紀)でも「Il Matto(狂人)」として既に存在している。

Waite は当時広く行われていたヘブライ文字の対応を本書で採っていません。理由の二つ目:

secondly, because nearly every attribution is wrong.

第二に、ほぼすべての対応が誤っているからである。

ほかの札と並んだとき

この札を引いたあなたへ

愚者を引いたあなたは、まだ何者でもない自由を持っています。完璧な準備を待つほど、出発は遠ざかります。今日は「準備不足のまま動く」ことを自分に許してください。

今日の1枚を引いてみる

扇に並んだ22枚から1枚を選ぶ、無料のタロット占いです。

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出典

  • 英文:A. E. Waite『The Pictorial Key to the Tarot』(Wikisource・1910/1922刊)第1部・第2部・第3部
  • 原画:Wikimedia Commons「RWS1909 - 00 Fool.jpeg」(Pamela Colman Smith〈1878–1951〉画・1909年 Rider 社刊・パブリックドメイン)
  • 和訳と解説は当サイトによるもの。占いの結果は娯楽としてお楽しみください。