
MAJOR ARCANA · XVIII
月The Moon
霧のなかでこそ、本物が見える
月の原画を読む
描かれたもの7か所に番号を付けました。番号を押すと、その部分について Waite が書いた一文と和訳、補足が読めます。
横顔の月
the moon is increasing on what is called the side of mercy, to the right of the observer
月は「慈悲の側」と呼ばれる側、見る者から見て右側で満ちつつある。
太陽のような円の中に三日月と横顔が重ねて描かれています。Waite はこの「満ちていく月」を、従来の図柄との違いとして挙げています。
長短の光線
It has sixteen chief and sixteen secondary rays.
16本の主な光線と、16本の副次的な光線がある。
長い光線と短い光線が交互に並んでいます。
落ちるしずく
the dew of thought falls
思考の露が落ちる。
月の下に、黄色いしずくが散っています。原典は第1部でも、月が「大きな露のしずく」を落とすと書いています。
2つの塔
Beneath there are two towers
その下には2つの塔がある。
13番・死の背景にも、2つの柱のあいだの太陽が描かれています。
水辺から続く道
The path between the towers is the issue into the unknown.
塔のあいだの道は、未知へ出ていく出口である。
道は手前の水辺から始まり、塔のあいだを抜けて山の方へ消えています。
犬と狼
The dog and wolf are the fears of the natural mind in the presence of that place of exit
犬と狼は、その出口を前にした自然な心が抱く恐れである。
左が明るい色の犬、右が淡い色の狼。どちらも月を見上げています。
水から這い出るザリガニ
that which comes up out of the deeps
深みから上がってくるもの。
Waite は、それが陸に上がろうとしても「たいていは元の所へ沈んでいく」と続けます。
原典の占的意味と、消えた語
Waite は本書の第3部で、各札に占いで使う語を短く並べました。
正位置
Hidden enemies, danger, calumny, darkness, terror, deception, occult forces, error.
隠れた敵、危険、中傷、闇、恐怖、欺き、隠された力、誤り。
逆位置
Instability, inconstancy, silence, lesser degrees of deception and error.
不安定、移り気、沈黙、より軽い程度の欺きと誤り。
原典と、いまのキーワード
正位置の「隠れた敵、危険、中傷、闇、恐怖、欺き」は、現代の「不安・隠れた事情」とよく重なります。逆位置は「不安定、移り気、沈黙」に、「より軽い程度の欺きと誤り」。現代は逆位置を「霧が晴れる」と明るく読みますが、原典では欺きが軽くなるだけで、消えるとは書かれていません。逆位置を読むときは、霧が薄くなっても残っているものに目を向けてみてください。
いまのキーワードから消えた語
- calumny中傷
- あいまいな不安より具体的に、「隠れた敵」「中傷」と人からの害が並びます。
- silence沈黙(逆位置)
- 逆位置に「沈黙」。現代の「霧が晴れる」とは違い、原典の逆位置は欺きが軽くなるだけで、晴れ渡るわけではありません。
原典メモ
The card represents life of the imagination apart from life of the spirit.
この札は、霊の生から切り離された想像の生を表す。
Waite は月の光を「映された光」と呼び、19番・太陽の「直接の光」と対にしています。
現代の読み方
月は不確かさ・幻想・潜在意識の領域を象徴する。霧の中では物の輪郭が曖昧になり、犬(飼い慣らされた本能)と狼(野生の本能)の境界も溶ける。占いで現れたとき、それは理屈で割り切れないテーマと向き合う時期を告げる。
正位置
- 状況
- 見えないもの・潜在意識・直感に意識が引かれ、輪郭の曖昧な時期にいます。
- 内面
- 理屈で割り切れない不安と憧れが、同時にあなたの中に流れているはず。
- 行動のヒント
- 今日は明確な決断を急がず、夢や違和感をメモするだけに留めてください。
逆位置
- 状況
- 霧が晴れ、誤解や不安の正体が見えはじめている段階です。
- 内面
- 「結局、自分が一番自分を欺いていた」という気づきが芽生えていませんか。
- 行動のヒント
- 今日は最近モヤモヤした出来事の事実だけを書き、解釈を一旦剥がしてみてください。
恋愛・仕事・人間関係で出たとき
月が恋愛で出たときの意味は?
相手の本心が見えない時期。直感と不安が同居する関係性。
月が仕事で出たときの意味は?
情報が不完全な状態での判断。決断を急がず情報収集を。
月が人間関係で出たときの意味は?
誤解・噂・隠された本音。直接対話で霧を晴らす必要がある。
「月」のテーマを、誰かに話しながら整理したくなったら。
電話占いの選び方と、使いすぎを防ぐルール →伝統的な対応
Golden Dawnではヘブライ文字「コフ(後頭部)」、占星術上は魚座、生命の樹ではネツァからマルクトへ降りる第29の道に対応する。古代の夜の女神信仰(イシス、ヘカテ、ディアナ)と結びつけられ、潜在意識・夢・幻想を象徴する図像として発展した。
Waite は当時広く行われていたヘブライ文字の対応を本書で採っていません。理由の二つ目:
secondly, because nearly every attribution is wrong.
第二に、ほぼすべての対応が誤っているからである。
ほかの札と並んだとき
この札を引いたあなたへ
出典
- 英文:A. E. Waite『The Pictorial Key to the Tarot』(Wikisource・1910/1922刊)第1部・第2部・第3部
- 原画:Wikimedia Commons「RWS1909 - 18 Moon.jpeg」(Pamela Colman Smith〈1878–1951〉画・1909年 Rider 社刊・パブリックドメイン)
- 和訳と解説は当サイトによるもの。占いの結果は娯楽としてお楽しみください。


