女教皇(The High Priestess)の原画。1909年 Rider 社刊、Pamela Colman Smith 画

MAJOR ARCANA · II

女教皇The High Priestess

沈黙のなかに、ほんとうの答えがある

正位置直感秘密静けさ知性内省

逆位置思い込み閉鎖的神経過敏感情の乱れ孤立

女教皇の原画を読む

描かれたもの6か所に番号を付けました。番号を押すと、その部分について Waite が書いた一文と和訳、補足が読めます。

原典に記述あり独自の観察
  1. 角のある冠

    a horned diadem on her head, with a globe in the middle place

    頭には角のある冠をいただき、その中央に球がある。

    左右に開いた2本の角と中央の白い球。原典は形を述べるだけで、ここでは意味づけをしていません。

  2. 胸の十字

    a large solar cross on her breast

    胸には大きな太陽の十字がある。

    足元には月、胸には太陽の十字。ひとりの人物に月と太陽の両方が重ねられています。

  3. TORA の巻物

    It is partly covered by her mantle, to shew that some things are implied and some spoken.

    それはマントで一部が覆われている。あることは言外に含まれ、あることは語られる、と示すためである。

    巻物の文字は Tora(律法)。原画でも文字の一部が衣に隠れています。書かれていることのすべては見せない、という札です。

  4. 黒い柱 B と白い柱 J

    She is seated between the white and black pillars—J. and B.—of the mystic Temple

    彼女は神秘の神殿の白と黒の柱――J と B――のあいだに座っている。

    原画では、見る側の左が黒い柱 B、右が白い柱 J。正義(11番)も柱のあいだに座りますが、Waite は「行き先の世界が違う」と書き分けています。

  5. ザクロの幕

    the veil of the Temple is behind her: it is embroidered with palms and pomegranates.

    背後には神殿の幕があり、ナツメヤシとザクロが刺繍されている。

    幕のザクロは赤い実がのぞく形で描かれています。幕の向こうにあるものは描かれていません。

  6. 足元の三日月

    She has the lunar crescent at her feet

    足元には三日月がある。

    Waite は彼女を「借りた光の女王」とも呼びます。月は自ら光らず、太陽の光を映すもの。足元の月はその言葉と響き合います。

原典の占的意味と、消えた語

Waite は本書の第3部で、各札に占いで使う語を短く並べました。

正位置

Secrets, mystery, the future as yet unrevealed; the woman who interests the Querent, if male; the Querent herself, if female; silence, tenacity; mystery, wisdom, science.

秘密、神秘、まだ明かされない未来。質問者が男性なら彼の関心を引く女性、女性なら質問者自身。沈黙、粘り強さ。神秘、知恵、学問。

逆位置

Passion, moral or physical ardour, conceit, surface knowledge.

情熱、心または身体の熱、うぬぼれ、うわべだけの知識。

原典と、いまのキーワード

現代の「秘密」は、原典の「秘密、神秘、まだ明かされない未来」を受け継いでいます(直感という語は原典の列にはありません)。ずれが大きいのは逆位置です。いまの解説が「思い込み・閉鎖的」と内向きに読むのに対し、Waite は「情熱、心または身体の熱、うぬぼれ、うわべだけの知識」と、熱がこもる方向の語を並べました。静けさが崩れる形を、閉じる側ではなく熱する側で読む見方です。

いまのキーワードから消えた語

tenacity粘り強さ
静かで受け身の像として語られがちな女教皇に、原典は「粘り強さ」を置いています。黙っていることは、手放すことではありません。
Passion情熱(逆位置)
逆位置の筆頭は「情熱」。冷たく閉ざす方向ではなく、静けさが熱に押し流される方向として書かれています。
surface knowledgeうわべだけの知識
正位置の「知恵・学問」が反転すると、知ったつもりの浅さになる。現代の解説ではあまり前に出てこない対比です。

現代の読み方

女教皇は大アルカナのなかで魔術師(1)と対をなす。魔術師が能動・顕在意識・行為を象徴するなら、女教皇は受動・潜在意識・沈黙を象徴する。ただし「受動」とは「動かない」ことではなく、内側に向かって深く動くこと。占いで現れたとき、表に出ない情報や直感が鍵となる時期を告げる。

正位置

状況
言葉にならない感覚が、いま最も信頼できる羅針盤になっています。
内面
外の声より、自分の内側にある静かな確信に意識が向いているようです。
行動のヒント
今日は誰かを説得するより、ひとりの時間を15分だけ確保して内省してください。

逆位置

状況
直感を疑い、外の情報に流されすぎている自覚があるのではないでしょうか。
内面
「分からないままでいる勇気」を、今のあなたは少し失っているかもしれません。
行動のヒント
情報収集を一度止め、ノートに「今、本当に分かっていることだけ」を書いてください。

恋愛・仕事・人間関係で出たとき

女教皇が恋愛で出たときの意味は?

言葉にしないままの関係。相手の本心が見えない時期。問い詰めるより観察を選ぶ場面。

女教皇が仕事で出たときの意味は?

裏方・研究・カウンセリングなど内面と関わる業務に追い風。表に出ない情報が鍵を握る。

女教皇が人間関係で出たときの意味は?

秘密を共有できる相手の存在。または、誰にも言えない何かを抱える自分自身。

「女教皇」のテーマを、誰かに話しながら整理したくなったら。

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伝統的な対応

Golden Dawn体系ではヘブライ文字「ギメル(駱駝)」、占星術上は月、生命の樹ではケテルからティファレトへ降りる第13の道に対応する。現存最古級のタロットであるヴィスコンティ・スフォルツァ版(15世紀ミラノ)では「La Papessa」として描かれた。中世の伝承「ヨハンナ女教皇」をモデルとする説もある。

Waite は当時広く行われていたヘブライ文字の対応を本書で採っていません。理由の二つ目:

secondly, because nearly every attribution is wrong.

第二に、ほぼすべての対応が誤っているからである。

ほかの札と並んだとき

この札を引いたあなたへ

女教皇を引いたあなたは、答えを外側で探さなくていい時期にいます。誰かのアドバイスを求める前に、自分の中の小さな声を10分だけ聞いてみてください。

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出典

  • 英文:A. E. Waite『The Pictorial Key to the Tarot』(Wikisource・1910/1922刊)第1部・第2部・第3部
  • 原画:Wikimedia Commons「RWS1909 - 02 High Priestess.jpeg」(Pamela Colman Smith〈1878–1951〉画・1909年 Rider 社刊・パブリックドメイン)
  • 和訳と解説は当サイトによるもの。占いの結果は娯楽としてお楽しみください。